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F県警に赴任して一年も経過した5月ゴールデンウィークを過ぎた頃だった。
40歳になったばかりの吉井はデスクでのんびりと鼻毛を抜いていた。
都会にいた一年前より伸びるスピードが遅くなっていたので、つい手入れを怠ってしまっていたのだ。
そこに一本の電話が鳴った。
吉井は部下の松山を顎で促し、電話に出させる。
都会にいた頃と違ってここでは血をたぎらせるような事件がなかなかない。
それは平和でいい事ではあるが、この男にはそれ程の高潔さを持ち合わせていなかった。
「警部! 高戸町のペンションで飛び降りです!」
松山の甲高い声が刑事部屋に響き渡る。
吉井は先ほどよりかはまだマシな顔をして立ち上がった。
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