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陽が落ちて夜になると、松山は『桜樹』にいる全ての人間を広間に集めた。
すでに導き出した答えは、上司である吉井にも話していなかった。
吉井に無駄にかき回されたくなかったからである。
それには、さも今思い付いたような小芝居が必要だった。
松山は猪狩が言っていたように広間の明かりを最小限まで落とし、ヤマザクラまでが暗くて見えない事を実証しているふりをした。
「これで猪狩君の証言である『見えなかった』は証言されました」
「おれを疑っていたんですか?」
猪狩が眉間にしわを寄せながら、申し訳程度の反論を松山に返した。
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