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初めてのキスの味は
ほろ苦く
煙草の香りがした
タメなのに
なんでこいつは堂々と制服をきて
あたしの前で煙草を吸ってられんだろ?
『ねぇ』
『ん?』
『煙……もろあたしにかかる』
そう言って睨むと
『すみませんね~』
という謝る気ゼロの言葉と共に
あたしの目の前で
〔ふぅ~〕
と煙を吐く
またかかったじゃんか…
でも一回言ってもわかんないなら
もういいや
と諦めて
タバコを吸う横顔を眺めていた
『……何?』
あたしの視線に気がついたみたいで
怪訝そうにあたしを見る
『いや?別に?』
そう返事をすると
『ふぅん』
と言ってあたしから視線をそらす
〔煙草って美味しいのかな?〕
目の前であまりにも
うまそうに吸っているから
思わず心の中でそう思う
『まずいよ』
目の前のそいつは
あたしが心の中の問いかけをすんなりと答えた
『……え!?』
と驚くと
『口に出してた』
といって笑った
〔じゃあなんでそんなに美味しそうに吸ってるんだろ……?〕
今度は大丈夫
口には出してないハズ
『……』
返事がないからやっぱり大丈夫だったんだと
あたしは安堵のため息をもらした
『なんなら試してみる?』
そう言いながら
持っていた煙草を道路に投げ捨て
足で消すと
あたしの目の前にそいつの顔が合った
『……へ?』
突然話しかけられて
びっくりしたもんだから
顔が近いのがそんなに気にならなかった
一瞬目が合う
そして
次の瞬間には
近かった顔がさらに近くなり
気がついたら
自分の唇に温かいぬくもりと
ほろ苦い煙草の香りがした
一瞬の出来事で目を閉じるのも忘れた
きっと今のあたしは間抜けな顔をしているに違いない
だって
ほら
目の前のコイツが笑ってる
『うまかった?』
そう言ってあたしを見つめるそいつは
いたずらっぽく笑ってる
こいつが聞きたいのは
〔タバコがうまかった〕
のか
それとも
〔キスがうまかった〕
のかさっぱり分からなくて
あたしは思わず
『甘かった』
と答えた
ファーストキスは
ほろ苦い煙草の香りと
温かいぬくもりと
そして
ほんのりと甘い味がした
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