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「孝汰くん。何見てるの?」
「あっ」
隣にいた女、早崎アリサが僕の双眼鏡を奪い取った。
「ん~、何も見えないっ」
「クスクス、だめだよ。」
僕はそっと彼女から双眼鏡を取り上げた。
「あ!どこ行くの?
孝汰くぅ~ん」
うるさいな…。
僕は彼女の髪を優しく撫でて言った。
「これから課題を提出しに行くんだ。早崎は先に戻ってて?」
ニコリ。僕が微笑むと明らかに早崎の顔が緩んだ。
「わかったぁ。先行ってるねぇ…」
早崎はふにゃふにゃと手を振った。
僕も手を振り返し、笑顔のまま屋上のドアを閉めた。
―寒気がするよ、早崎。
僕の表情は先ほどとは別人のように冷めていた。
早崎は女の子たちの中でも特にしつこい、一日中僕の周りを彷徨いてやがる。
気持ち悪い。
早崎に触られた肩や髪に触ってしまった手を何度もほろう。
僕が欲しいのはキミのように低能な女じゃないよ、早崎。
僕が欲しいのは…
麻美、ただ一人だけ。
クスクスクス。
けど早崎のやつ、あれでなかなか可愛い顔してやがる。
僕なんかを好きにならなければもっと楽しい生活を送れたんじゃないかな
クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクス
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