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日比谷は振り返り、僕の側に寄ってきた。
「……日比谷……」
日比谷は無言で汗に濡れた僕の頬に触れた。
…よかった。
きっと助けてくれる。
「……月城、くん」
「……?」
「私もね、月城くんのこと大好きだったよ。
月城くんの役に立ちたくて、ずっと月城くんの側にいたかった……」
「……」
…んな話いらないからとっとと手錠を外せよな……。
内心そう思いながら口に出せるはずもなく、
僕は必死で聞いているふりをした。
「ありがとう日比谷。
僕も日比谷が大好きだったよ。だから、ね?
これ外して?一緒に逃げよ?」
だんだん苛々してきた。
これを外すだけでいいんだよ。さっさとしろ!!
「ありがとう月城くん……でもね、あたし……
違ったの。」
は?
「私、月城くんのこと、ずっと好きだと思ってた。
でも違った。
私、月城くんが人気者だったから好きなだけだった。
だって苛めがみんなにバレて、そうじゃなくなった瞬間一気に冷めたもん……。」
……日比谷は視線を床に落とし、しくしく泣き始めた……。
いや……
いやいやいやいや。
どうでもいんだよ。
早く外せって言ってるのに……!
「月城くん……私、あなたを利用してた。
あなたの隣でいることで、私も人気者になった気分でいただけなの。
でもそんなの、好きでもなんでもないよね。
せっかく好きって言ってくれたのに……あたし、月城くんの気持ちを弄んだ。
最低なあたしを、恨んでください……」
日比谷は完全に勘違いしている。
こいつの中では勝手に、僕を利用したことになっている……。
「月城くん。」
「えっ?」
「今までありがとう。
そして、さようなら……。」
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