逃走

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何回… 何十回手錠を外しにかかったのかわからない。 手錠はビクともせず、鋭二を縛り付けたままだ。 「……鋭二…… ごめんね。 もう少しだからね。」 汗が滴り落ちた。 ダメ。こんなところで休むわけにはいかない。 少しの時間が、私達には命取りになるんだ…。 …あれ? ─突然、立ちくらみに襲われた。 私は倒れて床に顎を強打した─。 「麻!」 鋭二は顔を強張らせて叫んだ。 …大丈夫だよ。私は大丈夫だから。 「あはは。やばい、ちょっとつまずいちゃった…」 そう言って起き上がった。…けど。 力が抜けて、すぐにトイレの床に落ちてしまった。 「あれ…変だな…」 ねえ… お願いだから起き上がってよ、私。 私が気を失ったら、鋭二どうなるの…? 私、なんのためにここに来たの…? 「しっかり、しなきゃ」 床に両手をつき、最後の力を振り絞る。 死ぬわけにはいかない。 絶対に。 ─私は気力だけで立ち上がった。 「麻、お願い、もういいから、もういいから…」 鋭二は私にしがみついて言った。 「俺のことはいいから… 早く逃げろよ…。 頼むから…お願いだから」 たくさんの涙を流しながら、鋭二は必死にお願いした…。 …馬鹿だな。 鋭二置いて逃げれるわけないじゃん。 私は鋭二を振り払って言った。 「鋭二が好きだから、逃げないよ。」 「じゃあ…好きなら、言うこと聞けよ…俺なら大丈夫だし…一人で逃げられるから」 涙で途切れ途切れそう言った鋭二。 逃げられるわけないのに… 私を行かせる為に、嘘つくんだ。 パァン! 平手で鋭二を殴った。 「バカにしないでよ! 絶対助けるって言ってんでしょ!?」 鋭二は目を見開いて私を見てる。 大丈夫。絶対に助けるから──。
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