逃走

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──目の前で眠っている天使…… あたしの天使──。 「ねえ孝太。起きてー。まだ死なないでよ…」 あたしはグロスを塗り直し、鏡で自分の顔を確認する。 ……あたし可愛い。 孝太にも褒めて欲しいなあ……。 あたしは理科室の実験台の上に横たわっている孝太にすりよった。 「孝太起きて…?」 「……」 孝太はゆっくりと瞳を開いた。 「アリ…サ…」 「ふふっ。孝太の望み通り鋭二くん助けてあげたよ。」 「…あり…がとう」 孝太は息をするのも苦しそうに答えた。 …可哀想。 「孝太。大丈夫だよ…あたしがずっとそばにいてあげるから」 ぎゅっ。 あたしは孝太を抱き締めた。 「…ハァ…ハァ…アリサ…僕……疲れた」 「あたしも。あたしも疲れちゃったよ…」 「ねぇ…麻美は…僕のこと…一瞬でも…好きだったかな?」 「うん」 「僕と…ずっと一緒に…いたいって…思ってくれたかな?」 「うん」 「僕…は…生まれてきても…よかったの…かな?」 「うん」 あたしが頷くと孝太は嬉しそうに微笑んだ。 「……よかった……」 ……これでやっと孝太はあたしのものになった……。 「孝太ぁ。……あたし次生まれてくるときは孝太に生まれたいな」 「……」 「そしたらずっと一緒にいられるもん。」 神様お願い 次生まれるときは孝太になれますように。 私は孝太を抱きながら祈った。
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