離れたくない

9/9
前へ
/9ページ
次へ
まだお昼過ぎなのに、二丁目はとても賑やかだ。   女の人は──全く見当たらない。 どこもかしこも男の人だらけ。 しかも、その殆んどがカップルだと思われる人達だ。   俺と純一さんもそう見られるのかな…?     「あら~、ボク可愛いねえ」     目の前にいかついお兄さんが現れた。   (ひっ…)   さっきの口調からすれば、ちまたで言われる「オネエ系」の人だろう。 いやでも、実際見ると迫力あるし恐いなあ…     「あなたたち、カップル?」     お兄さんが純一さんに尋ねた。     「ええ、まあ」     意外にも明るくフレンドリーに純一さんは答えた。     「いいわねー、もし独り身だったわ食べちゃってたわ」     マジでやめてくれ…   投げキッスをされ、背筋がゾクッとした。   力なく手を振り、お兄さんと別れた。 こんな人が沢山いるのかな…恐い……   俺はぎゅっと純一さんの腕を抱きしめた。   さっきと似たようなお兄さん達が見つめてくる。 俺、絶対狙われてる。         ドキドキしながら歩いていくと、突然純一さんが足を止めた。     「ここにすっか」     見上げるとそこは、よく見るラブホテルより多少高級そうなホテルだった。     「はい…」     俺は静かに頷いた。   じょ、冗談じゃないよね!? 本当に入るんだよね!?   俺は純一さんの腕に引っ張られるまま、ホテルの中に入った。         内装は普通のホテルと代わり映えしない。 色恋をしたことがないので、ラブホテルが珍しく感じて、辺りを見回した。     「峰?おい、峰ってば」     純一さんの呼び声にしばらく気付かず、ロビーの装飾に見とれていた。     「ほら、行くぞ」     俺の手を引っ張ってエレベーターまで向かった。   部屋へどんどん近付くと、ドキドキが治まらなくなってきた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加