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まだお昼過ぎなのに、二丁目はとても賑やかだ。
女の人は──全く見当たらない。
どこもかしこも男の人だらけ。
しかも、その殆んどがカップルだと思われる人達だ。
俺と純一さんもそう見られるのかな…?
「あら~、ボク可愛いねえ」
目の前にいかついお兄さんが現れた。
(ひっ…)
さっきの口調からすれば、ちまたで言われる「オネエ系」の人だろう。
いやでも、実際見ると迫力あるし恐いなあ…
「あなたたち、カップル?」
お兄さんが純一さんに尋ねた。
「ええ、まあ」
意外にも明るくフレンドリーに純一さんは答えた。
「いいわねー、もし独り身だったわ食べちゃってたわ」
マジでやめてくれ…
投げキッスをされ、背筋がゾクッとした。
力なく手を振り、お兄さんと別れた。
こんな人が沢山いるのかな…恐い……
俺はぎゅっと純一さんの腕を抱きしめた。
さっきと似たようなお兄さん達が見つめてくる。
俺、絶対狙われてる。
ドキドキしながら歩いていくと、突然純一さんが足を止めた。
「ここにすっか」
見上げるとそこは、よく見るラブホテルより多少高級そうなホテルだった。
「はい…」
俺は静かに頷いた。
じょ、冗談じゃないよね!?
本当に入るんだよね!?
俺は純一さんの腕に引っ張られるまま、ホテルの中に入った。
内装は普通のホテルと代わり映えしない。
色恋をしたことがないので、ラブホテルが珍しく感じて、辺りを見回した。
「峰?おい、峰ってば」
純一さんの呼び声にしばらく気付かず、ロビーの装飾に見とれていた。
「ほら、行くぞ」
俺の手を引っ張ってエレベーターまで向かった。
部屋へどんどん近付くと、ドキドキが治まらなくなってきた。
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