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それは純一さんのお店「MASURAO」がオープンして間もない頃。
俺は純一さんのご好意で働かさせてもらっていた。
俺が接客中に純一さんが奥の部屋へと手招きしてきた。
いつもとは違う。明るい顔をしていない。どうしたんだろう?
「すみませんね、ちょっとオーナーが…」
ペコペコしながら席を外して、純一さんのところまで行った。
「どうしたんですか?純一さん」
奥のスタッフルームに入り、俺は首を傾げて聞いてみた。
「はい、コレ」
「え?」
純一さんは茶封筒をヒラヒラさせて俺に渡した。
なんだろう…これって…
触ってみると紙が折り畳まれているようで、お金ではないみたいだ。
どうしても気になったので中身を取り出そうとした。
「仕事が終わってからでも見ろ」
どうしてそん なに怒ったように振る舞うの?
俺はしゅんとして、俺のカバンに封筒を入れた後に接客へもどった。
一応、純一さんとはお付き合いはしているのだけど、一度もそんな態度で俺に接したことなんて無かったから恐い。
仕事が終わる直前まで、封筒の中身が知りたくてしょうがなかった。
『お疲れ様でしたー!!』
最後まで元気に挨拶を交わした後、封筒の中身を見てみた。
(え…!?)
思わず声が出そうになったけど、しっかり手で口をおさえた。
嘘だ…冗談だよね…?
封筒の中身は紙が一枚、折り畳まれて入っていた。
その紙に書かれた内容は、俺を解雇するということだった。
俺はスタッフルームで帰りの支度をする皆に、こんな内容見せられないと思い、必死に隠した。
「んじゃ、峰お疲れ」
「お疲れ様で~す…」
バタンと扉が閉まり、全員居なくなったところでその場にしゃがみこんだ。
涙で視界がぼやけてきた。
どうして俺を辞めさせるの…?
ライブやテレビ以外のお仕事で、純一さんとお仕事できるなんて楽しみにしてたのに。
今までのお仕事だって、純一さんがいたから頑張れた。
俺にとって純一さんは憧れであり、元気の源なのにさ…
それなのに………
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