離れたくない

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外部から襲ってくる痛みと伴って、胸まで痛みだした。   俯きたい。でも俯けない。 これだって立派なお仕事。手は抜けない。 俺は必死に笑顔をつくった。   それでも純一さんの手は離れることはなく、俺の肩にある。   もうやめて。 俺を傷つけるのは…   うっすらと視界がぼやけてきた。 カメラのフラッシュがやけに光って見える。     『DJOZMAさん、ありがとうございました』     よかった… もう少しで涙が出そうになってた。   ようやく純一さんの手も離れ、痛みから解放された。   けど、まだ痛い。胸が痛い。   誰かに心臓を握り締められるような圧迫感。 凄くドキドキして、ソワソワして。 会場から出た後でも治まらない。   自分ではどうすることも出来ない。   ちょっとでいい、純一さんが優しくしてくれるだけで痛みはなくなるのに。 俺がそう望んでも、今の純一さんは怒っている。   どうしたら純一さんは笑ってくれるの?   いつもの純一さんに戻るの?   心が重くなったような気がした。           控え室に戻り、皆は一息ついて煙草を吸い始めた。 俺は椅子にも座らずにただ突っ立っていた。   また目が潤み始める。 これは煙草の煙が目にしみてるわけじゃない。   ほんとどうにかなりそう…     「すみません、俺ちょっとトイレ…」     俺は控え室から逃げ出した。   トイレで顔洗いながら泣けば、顔だって晴れないよね。     トイレに行き、洗面所でバシャバシャとおもむろに顔に水をかけた。       …ばっかみたい。OZMAさんが引退考えるなんて。   俺が純一さんのこと好きなこと、言わなくてもわかってるくせに。   俺と純一さんを引き裂こうとしてるの?   OZMAさんは純一さんが好きなの?       OZMAさん、俺はどうしても貴方のことが悪者にしか思えないよ。
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