離れたくない

7/9
前へ
/9ページ
次へ
顔を上げると、大きな鏡に自分の惨めな顔が映る。   こんな顔…誰からも見られたくない。   また涙を水と一緒に流した。       「泣いてるのか」       スッと俺の背に手が乗せられた。 優しく、少しかすれた高い声。   もしかして──       やっぱり純一さんだった。 俺を心配そうな目で見つめる。     「戻ってこねえから心配したんだぞ」     心配…?本当に心配してるの…?     ごめんなさい、まだ純一さんのこと信じられない。   MASURAO辞めさせて、DJOZMAのメンバーにさせて。   何もかもわかんないよ… 耐えられない。     「ごめんなさいっ、俺帰ります…」     純一さんの手を払いのけて帰ろうとした。 顔にまだ滴が付いていようと関係ない。     「待てっ!!」     赤くなりそうなくらいに手首を強く掴まれた。     「やだ…はなして…っ」   「お前、さっきから変だぞ?」   「純一さんのお店も辞めさせられて、知らないうちにDJOZMAのメンバーにされて、理解できないんです」   「あ?」   「昨日から純一さんに冷たくされるし、俺、悲しかったんですよ?」     心の内を話そう。     「純一さんのことが好きなのに、離れるなんて嫌だ……」     また泣いてしまった。 何度涙を流すんだろう…     「峰、許せ。俺だって望んだことじゃないんだ」     純一さんは俺を軽く引っ張り、抱き寄せた。     「気持ちは峰と一緒だ。俺の店で働いてもらいたいけど、それは無理なんだ」     頭をポンポンと叩き、なだめるように言われた。     「俺の二代目になる奴は夜のお仕事はさせられない」   「どうして…ですか?」   「峰は俺のモンだ。男だろうと女だろうと手出しはされたくないんだよ」     だから俺にあの書類を……
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加