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顔を上げると、大きな鏡に自分の惨めな顔が映る。
こんな顔…誰からも見られたくない。
また涙を水と一緒に流した。
「泣いてるのか」
スッと俺の背に手が乗せられた。
優しく、少しかすれた高い声。
もしかして──
やっぱり純一さんだった。
俺を心配そうな目で見つめる。
「戻ってこねえから心配したんだぞ」
心配…?本当に心配してるの…?
ごめんなさい、まだ純一さんのこと信じられない。
MASURAO辞めさせて、DJOZMAのメンバーにさせて。
何もかもわかんないよ…
耐えられない。
「ごめんなさいっ、俺帰ります…」
純一さんの手を払いのけて帰ろうとした。
顔にまだ滴が付いていようと関係ない。
「待てっ!!」
赤くなりそうなくらいに手首を強く掴まれた。
「やだ…はなして…っ」
「お前、さっきから変だぞ?」
「純一さんのお店も辞めさせられて、知らないうちにDJOZMAのメンバーにされて、理解できないんです」
「あ?」
「昨日から純一さんに冷たくされるし、俺、悲しかったんですよ?」
心の内を話そう。
「純一さんのことが好きなのに、離れるなんて嫌だ……」
また泣いてしまった。
何度涙を流すんだろう…
「峰、許せ。俺だって望んだことじゃないんだ」
純一さんは俺を軽く引っ張り、抱き寄せた。
「気持ちは峰と一緒だ。俺の店で働いてもらいたいけど、それは無理なんだ」
頭をポンポンと叩き、なだめるように言われた。
「俺の二代目になる奴は夜のお仕事はさせられない」
「どうして…ですか?」
「峰は俺のモンだ。男だろうと女だろうと手出しはされたくないんだよ」
だから俺にあの書類を……
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