混血

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  「天使さん」 俯いていた顔をあげて、目の前の彼を見つめる。 涙のせいで上手く見えなかったけれど。 …………でも今なら。 「わたし、死にたくない」 今なら自然に笑うことができる。 彼に向かって、微笑む事が出来る。 けれど天使さんは怪訝そうにこちらを見た。 彼にはわかるのだろう、わたしの思っていることが。 心の中が。 「でも、殺してください」 わたしが三種混血であるなら、わたしが住む世界はない。 混血は親を殺され、人間界に追放される。 一人で生きていけず、食べ物もなく、大半は命を落とす。 化け物だと殺されることも……あった。 「頑張れば、今まで通りの生活を続けていけるかもしれない。ずっと我慢して、いつか良い事があるならって、生きていけるかもしれない」 普通に生活している混血だっているのだから、きっと不可能じゃないはず。 でも。 「それで天使さんが困るのは嫌だから、殺してください」 ――――わたしは、結局。 初めから、 ココロが壊れている。  
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