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「良い事があるなら、生きられるか?」
天使さんは……よくわからない事を言った。
見上げると、やっぱり彼は微笑んでいる。
どこか悲しそうな、おかしな笑顔。
「幸せな未来があれば、生きられるか?」
彼の言葉の意味も分からず。
表情の理由も分からず。
わたしの心は不安でいっぱいになってしまう。
理由のわからない、よくわからない、なにかが気持ち悪い。
「天使さん、それってどういう…………」
その問いを遮られるように、
抱き締められた。
頭が混乱する。
真っ白になる。
上手く思考出来ない。
顔が、熱い。
「な……ななな、天使さん、何を……っ」
慌てて体から離れようと顔をあげる。
けれど彼が呟いた言葉で、わたしは動けなくなった。
「…………すまない」
謝罪だった。
どうして謝るの?
この位置からじゃ、彼の顔は見えない。
「わたしのせいだ、わたしが守れなかったから……」
天使さんの腕に、力がこもる。
泣いている気がした。
その理由は、よくわからない。
……本当に、よくわからない。
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