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天使さんはどうしてわたしに謝るの?
それはわたしに関係ある事なの?
…………それは、どうして。
「おまえは、生きろ」
予想しない言葉。
言われた事のない言葉。
…………違う。
昔に、一度だけ――――
「リアさんとヌイさんの分まで……お願いだから、生きてくれ」
目が、痛い。
熱い。
どうして、どうして。
頭が痛い。
もう思い出したくない、
のに。
『 ル 』
思い出せないわたしの名前。
『ここで静かに隠れていて。ロッサちゃんか くんを見つけたら助けてって呼ぶの。二人以外は呼んじゃだめだからね。
お願いだから、あなただけは―――
―――生きて。約束できる?』
『うん』
言いつけ通り、返事をした。
その言葉だけを残して、
お母さんは行ってしまう。
『お母さんはどこに行くの?』
振り向いたお母さんは、いつものように笑っていた。
『お父さんを助けにいくの』
最後の言葉。
「どうして、天使さんは謝るの?」
もう思い出したくなかった。
最後に名前を呼ばれた、あの時のことを。
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