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天使さんは苦い顔になって言葉を詰まらせる。
やっぱり、駄目か。
「いや、その、駄目というわけではなく、何だ。……もう時間がないのでな」
彼はどこか焦った様子で言い訳っぽい事を言いながら空を示した。
今まで気付かなかったけれど、空は明るくなってきていて……もうすぐ日の出のようだ。
いつの間にこんなに時間が経っていたんだろう。
時間がないってことは、もう天使さんと別れなければならないの?
…………そうだよね。
天使さんは天界に帰らなければいけない、だから仕方がない。
ここで会えた事だけでも、奇跡みたいなものなんだから。
でも、なんでだろう。
すごく悲しい。
「そんな顔をするな」
額を軽く小突かれて、びっくりして顔を天使さんへ向ける。
どこか意地悪そうな笑みを浮かべる彼は、小突いてきた拳を広げてわたしの頭を軽く叩く。
ぽんぽんと。
「永遠の別れというわけではない。また会う機会もあるだろう」
本当、だろうか。
本当にまた、会える?
「なら、天使さん。約束してくれますか?」
彼へ向けて小指を示す。
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