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「宗方に絶対ボール渡すんじゃねえぞ!?」
「こっちだ!こっちに回せ!!」
「ツヨシっ!マークされてるぞ!?」
広いグラウンドではお揃いのユニフォームを着てサッカーゴールの辺りをわらわらと走り回る男子生徒たちの声が響く。
黒い肌。
短く刈られた頭。
筋肉のついた太い脚。
高い身長。
そんな群れの中に一人、周りと比べると少し異質な人間が混ざっていた。
「甘い!ガードが甘すぎ!!」
きめ細やかな雪肌。
走る度に左右に大きく揺れる長いポニーテール。
体操服から伸びた脚。
長躯なサッカー部員の中にいると頭一つ分ほど小さな身長。
「よーしっ!明日のお昼も頂いたぁ!!」
スルスルと男達の間を抜けていった彼女は、ゴール手前にいた生徒の足元からボールを奪うと、迷う事なくその右足を繰り出す。
美しく弧を描いたボールは、キーパーの動きよりも数秒早くネットの中へと収まっていった。
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