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二人の姿を黙って見送った部員たちは、誰に指示されるでもなく各々がグラウンドの中に入ると静かにゲームを始めた。
――暁と二人きりになりたいから邪魔すんな――
その意思を受け取ったのかどうなのか、その日生徒たちは朝練を速やかに終了させ、里玖の手を煩わせることなく後片付けを終えると余計なおしゃべりもなく教室に戻って行ったという。
一方その頃、暁はというと
昨日と同じように里玖の膝の上に向かい合わせで座らされて、二人の愛の時間を楽しんでいた……はずもなく、
「いい加減、普通の椅子に座らせてもらえませんか!?先生もこの状態じゃ足が痺れるでしょう?」
暑苦しい程にベタベタと纏わり付く里玖から離れようと必死にもがいていた。
「全くそのようなことはないのでご心配なく。寧ろ僕としては、痺れた方が暁さんをより感じることが出来て嬉しいんですけどね」
変態発言極まりない里玖に、暁は深く息をつく。
部室に連れて来られて十五分。
里玖の膝の上に座らされて十分になる。
もう諦めにも似た溜め息は里玖の髪を掠って消えていった。
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