よりによって何故数学…

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―――――――――――  昨日のお仕置きの二つ目、『きちんとマネージャーの仕事をする』という約束を守る為に、慣れない早起きをして眠たい目を擦りながら学校にやって来た暁が目にしたのは、意気揚々とグラウンドに白線を引く里玖の姿だった。  基本、朝練には顔を出さない顧問の里玖がTシャツにジャージというラフな恰好をしていて、しかもグラウンド整備まで進んで行っている光景は暁だけでなく後からやって来たチームメイトたちも驚かせた。 「榊先生、今日はどうしたんすか?なんか張り切ってますね」  ユニフォームに着替えた部員が物珍しげにまじまじと里玖を観察する。 「新入部員も入ってきたことですし、今年度からは僕もサッカー部顧問として部活動に力を入れようと思いましてね。いけませんか?」  彼の低すぎず、高すぎずのバリトンボイスは女子生徒だけでなく男子生徒までもを魅了する。  里玖の柔和な微笑みに心臓を押さえた部員は「いえ…」と言葉を濁すと、そそくさと自分の持ち場へ走っていった。
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