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――今のは確実にハートを撃ち抜かれたな――
人事のように目の前の茶番を見学していた暁は、耳元に突然吐息を感じビクリと肩を揺らす。
「いつまで他の男を見ているつもりですか?」
「先生!他の人がいるのにあんまり近くに寄らないで下さいっ」
必要以上に近い里玖の顔に驚いた暁は、思わず一歩退くと自分の体をガードするように両腕を交差させる。
あからさまに里玖を避けるような態度を取る暁に、里玖は眉をひそめながら口を開いた。
「僕は暁さんの為にわざわざ早起きをしたのに、そんな態度は酷くありませんか」
「あたしだって昨日の約束を守る為に慣れない早起きをしてイライラしてるんです。おあいこでしょ?」
「可愛くないですよ?暁さん。巷で噂のツンデレプレイは結構です。僕はオールデレが好みなもので」
「あたしはツンデレでもヤンデレでもありませんし、可愛くないなんて百も承知です。そういうのがお好みならもっと素直で可愛い女の子を紹介しますけど」
引くことを知らない二人は、練習を始めた生徒たちには聞こえない音量で口論を更に加速させる。
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