2.雨の記憶

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しばらくたって『リョウ』が部屋に入ってきた。 ベッドに座ったままのあたしにマグカップを差し出した。 これは、貰っても大丈夫なんだろうか…。 受け取るには勇気がいる。 知らない人から物をもらっちゃ、駄目でしょう。 なんか、変なもの入れられていたり…。 「ぷっ」 やつは突然笑った。 「そんなに怖がんな。誰も捕って食ったりしねーよ。」 じゃあなにすんのよ……。 マグカップの中は、ミルク入りのコーヒーのようだった。 『リョウ』はベッドの淵に座ってポケットから煙草を取り出した。 あたしは深く息を吸い込んで、言った。 「あんた誰?」 『リョウ』はゆっくりとタバコに火をつける。 ゆっくりと吸って、煙を吐き出した。 「吸血鬼。月が欠けてくると人間の血を吸うの。」 こいつ、バカにしてる…?
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