2.雨の記憶

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やっぱり、その瞳からは、感情は読み取れなかった。 『リョウ』の瞳は黒いけれど、蒼い光を持っていた。 橋の上から見ていた月と同じ色。 「昨日は悪かったね。俺も貧血でぶっ倒れそうで。で、あのまま置いてくわけにもいかなくてね…。」 何を言っているんだろう。 やっぱりこの人危ない人かな。 「帰るだろう?今すぐなら送れるよ。」 そう言って『リョウ』は立ち上がった。 親切な人なんだろうか。 部屋の出口へ足を進める後姿を見てそう思った。 「あ、そうだ。」 彼は足を止めた。 「帰るとき、記憶はちゃんと消すから。」 だから、何を言っているんだこの人。 「そしたら死ぬことはない。」 本当に、吸血鬼だとでも言うんだろうか。 「殺さないの?」 あんたバカじゃないの?という嘲りを含めて、彼の黒く、蒼い瞳を睨んでやった。
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