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やっぱり、その瞳からは、感情は読み取れなかった。
『リョウ』の瞳は黒いけれど、蒼い光を持っていた。
橋の上から見ていた月と同じ色。
「昨日は悪かったね。俺も貧血でぶっ倒れそうで。で、あのまま置いてくわけにもいかなくてね…。」
何を言っているんだろう。
やっぱりこの人危ない人かな。
「帰るだろう?今すぐなら送れるよ。」
そう言って『リョウ』は立ち上がった。
親切な人なんだろうか。
部屋の出口へ足を進める後姿を見てそう思った。
「あ、そうだ。」
彼は足を止めた。
「帰るとき、記憶はちゃんと消すから。」
だから、何を言っているんだこの人。
「そしたら死ぬことはない。」
本当に、吸血鬼だとでも言うんだろうか。
「殺さないの?」
あんたバカじゃないの?という嘲りを含めて、彼の黒く、蒼い瞳を睨んでやった。
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