2.雨の記憶

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あたしは、目の前にいるリョウは話し始めた。 あの、雨の夜のことを。 人に話すのははじめてだった。 あの日、あたしが我儘言って、凌を呼んだりしたから。 雨が降ってるのに遅くまで引きとめたりしたから。 よりによって、会ったばかりの、素性の知れない男に話すことになるとは思わなかった。 『リョウ』は、黙ってあたしの話を聞いてくれた。 一言、また一言と言葉を紡いでいくうちに、ひとつ、またひとつ、悲しみが浮き出てきた。 目をあけると、部屋が暖かなオレンジに包まれていた。 夕方だ。 あたしは眠っていたみたいだ。 一体どのくらい眠っていたんだろう。 こんなにぐっすり眠れたのは久しぶりだ。 『リョウ』の顔が現われた。 「おはよう。準備できたら送るよ。」 今度はわかった。彼は、優しい瞳をしている。
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