2.雨の記憶

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外はすっかり暗くなっていた。 リョウの瞳はまるで全てを惹きつけるみたいに蒼い。 月も蒼い。 無断外泊になっちゃった。 しかも学校も休んじゃったし。 まぁ、どちらもたまにあることだけど、両方いっぺんにってのはなかなかないなぁ。 『リョウ』の車は少し欠けた月に向かって進んでゆく。 やっぱりその横顔から、感情は読み取れない。 「あ、名前まだ言ってなかったね。あたし…」 「いいよ。このことは全部忘れちゃうから。俺だけ覚えてても仕方ない。」 彼の言っていることは本当なのだろうか。 吸血鬼? 記憶がなくなる? だとしたら。 「雅!」 あたしは名前を叫んだ。 『リョウ』の表情は変わらない。 もしかしたら本当に、あたしは忘れるのかもしれない。 不思議とそんな気がしていた。 けど、せっかく会ったんだし、知ってほしかった。 別に、忘れたっていいよ。 この人は、こうやって誰の名前も覚えないんだろうか。 それって、寂しくないのかな。 『リョウ』は少し笑ったように見えた。 『リョウ』の車はあたしの家の前に着いた。 きっとあたしは『リョウ』のことを忘れてしまうのだろう。 「じゃ。」 『リョウ』が言った言葉はそれだけだった。 「ありがと。」 彼の車が走り出した。 月がさっきよりも高くなっていた。
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