34人が本棚に入れています
本棚に追加
外はすっかり暗くなっていた。
リョウの瞳はまるで全てを惹きつけるみたいに蒼い。
月も蒼い。
無断外泊になっちゃった。
しかも学校も休んじゃったし。
まぁ、どちらもたまにあることだけど、両方いっぺんにってのはなかなかないなぁ。
『リョウ』の車は少し欠けた月に向かって進んでゆく。
やっぱりその横顔から、感情は読み取れない。
「あ、名前まだ言ってなかったね。あたし…」
「いいよ。このことは全部忘れちゃうから。俺だけ覚えてても仕方ない。」
彼の言っていることは本当なのだろうか。
吸血鬼?
記憶がなくなる?
だとしたら。
「雅!」
あたしは名前を叫んだ。
『リョウ』の表情は変わらない。
もしかしたら本当に、あたしは忘れるのかもしれない。
不思議とそんな気がしていた。
けど、せっかく会ったんだし、知ってほしかった。
別に、忘れたっていいよ。
この人は、こうやって誰の名前も覚えないんだろうか。
それって、寂しくないのかな。
『リョウ』は少し笑ったように見えた。
『リョウ』の車はあたしの家の前に着いた。
きっとあたしは『リョウ』のことを忘れてしまうのだろう。
「じゃ。」
『リョウ』が言った言葉はそれだけだった。
「ありがと。」
彼の車が走り出した。
月がさっきよりも高くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!