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満月の次の夜――。
居た。昨日の人だ。また煙草を吸っている。あたしは近寄ってみた。
「ここ好きなんだ?」
「まーね。」
「だれか待ってるの?」
「別に。」
風が吹いた。
「あたしと会ったことある?」
彼はゆっくりと白い煙をはいた。
「ないよ。」
「ほんとに?」
「人違いじゃないの?」
「……」
一瞬何かの映像が頭をよぎった。蒼い目をした人。あたしの隣にいる人。
「思い出した。吸血鬼…。」
さっきよりも強い風が吹いた。あたしの隣にいる、蒼い目の男の人は何も言わなかった。
「アタリ?」
あたしはそのときすでに思い出していた。彼を知る者は殺されると。
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