4.ひとり

2/6
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
リョウはあたしを殺しはしなかった。でも、態度は冷ややかだった。今まで通り忘れとけとだけ言った。それなら何故あの満月の夜、あの橋にいたんだろう。 「雅ーっ。ボーッとしてないで帰るよぉ!」 「あいたーっ!」 背後からカナがどついてきた。そして一言。 「うーん、ごめん。ボーッとしてるのはいつもの事か。」 失礼な。 金曜日はカナはバイトがあるから学校を出てすぐに別れる。ヒロミは彼氏と帰る。だからあたしは一人になる。一人であの橋を通らなきゃいけない。だから金曜日は嫌い。家に帰ってもどうせ一人。一人になると、凌の事ばっかり考えてしまう。 橋の上まで来た。このまま帰る気にもなれなくて水面を眺めていた。ちょうど一月前、リョウとあった夜のように。 ここに立つと条件反射で涙が出てくる。 あたしは橋を渡り終えてあてもなく歩き始めた。 この苦しさは一体何処から来るんだろう。 この寂しさは? 助けて。 お願い。誰か助けてよ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!