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リョウはあたしを殺しはしなかった。でも、態度は冷ややかだった。今まで通り忘れとけとだけ言った。それなら何故あの満月の夜、あの橋にいたんだろう。
「雅ーっ。ボーッとしてないで帰るよぉ!」
「あいたーっ!」
背後からカナがどついてきた。そして一言。
「うーん、ごめん。ボーッとしてるのはいつもの事か。」
失礼な。
金曜日はカナはバイトがあるから学校を出てすぐに別れる。ヒロミは彼氏と帰る。だからあたしは一人になる。一人であの橋を通らなきゃいけない。だから金曜日は嫌い。家に帰ってもどうせ一人。一人になると、凌の事ばっかり考えてしまう。
橋の上まで来た。このまま帰る気にもなれなくて水面を眺めていた。ちょうど一月前、リョウとあった夜のように。
ここに立つと条件反射で涙が出てくる。
あたしは橋を渡り終えてあてもなく歩き始めた。
この苦しさは一体何処から来るんだろう。
この寂しさは?
助けて。
お願い。誰か助けてよ。
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