2.雨の記憶

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雨が降っていた。 凌が私の家から帰るところ。 バイクにまたがっていつものように言った。 「じゃあな。」 「ウン。気をつけてね。」 私は泣いた後だった。目が腫れている。 「元気になってよかったな。」 凌はいつものように笑った。 「ありがとね。」 「じゃーな。おやすみ。」 「おやすみ。」 そしていつものように去っていった。 私もまたいつものようにその後ろ姿を目で追いかけた。 交差点に差し掛かったところで、突然車が飛び出してきた。 危ない! あたしは走り出したかった。 でも、足が言うことを聞かない。 凌!凌!! 声が出ない。
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