~LYING FIGURE~

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ふいに動いた『ソレ』は 人間では無かった 『ソレ』には両腕が無く 顔には目や口等も無く 身体は蛞蝓の様にぬめぬめとしている そして胴体にある奇妙な亀裂 化け物だ… 『ソレ』は苦しんでいるかの様に 身を捩らせる様に上半身を振りながら 瓦礫を踏みしめ、ゆっくりと此方に近付いてくる… 神経を逆なでするような、ラジオのノイズが大きくなり 私は思わず後ずさった 頭の中を恐怖が占領する しかしバリケードが邪魔で逃げられない 身を翻せばバリケードをくぐり抜けて、逃げられるかも知れない しかし背中を見せたら襲われるかも知れない 一体どうしたら良いんだ? こいつは一体なんだ? すると化け物の胴体の亀裂がピクピクと動き出した 唐突に危険信号が頭の中を駆け巡る 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険 危険! 私は周りを見回し、武器に成りそうなものを探した 殺らなければ…殺られる! 私の本能がそう悲鳴をあげる 簡易バリケードを組んでいる木材を一本へし折り そして… 化け物の頭を思い切り殴った 手に伝わるグニャリとした感触 口さえ無いというのに、化け物は何処からか悲鳴をあげた 不快感を感じながら、尚も化け物の頭を殴り続ける 気が付けば化け物は血溜まりの中で地に伏せ、ピクリとも動かなくなった 「死んだのか?」 安堵から、溜め息が出た 極度の緊張と興奮から息が上がっていたのだ ラジオのノイズは鳴らなくなっていた 化け物の存在と何か関係があるのだろうか? とにかく化け物から離れたくて、バリケードをくぐり抜けた この町は… 一体どうなってしまったんだ?
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