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化け物で溢れた町の中を走っては歩き…
走っては歩き…
もう何処も彼処も化け物で溢れている…
化け物に遭遇する度に胸ポケットのラジオがノイズを響かせる
ノイズの音に反応して、化け物が耳も口も無いはずの顔を此方に向けて寄って来る…
ヨッテクル……
何故ラジオを捨ててしまわないのか…
理由なんてたった一つだ…
メアリーからのメッセージを待っているからだ
自分でも呆れ返る程に、彼女の存在にすがっている
化け物から逃げる様にしてカッツ通りへ入る
カッツ通りを歩いていると、ラジオが小さなノイズをあげ始めた…
目を凝らすと、前方に霧に紛れた化け物の姿があった…
私にはもう走る気力も体力も無い…
化け物はまだ私に気付いていない様で、フラフラと覚束無い足取りではあるが…
このままだと確実に私の方へとやって来る…
ラジオのノイズも段々と大きくなっていく…
一体どうする?
引き返しても化け物が居るはずだ…
逃げる様にして、カッツ通りへと入ったのだから…
前方にも後方にも化け物…
化け物で溢れて、狂った町…
その時私の目に横路が飛び込んで来た…
素早く地図を確認するとマーティン通りだという事が分かった…
同時にマーティン通りが袋小路だという事も…
もしマーティン通りに化け物が居たら、万策が尽きたと言うところだ…
迷っている間にも、ノイズはどんどん大きくなり、私を急かす…
いくらラジオを抑えつけても、ノイズが洩れる…
私は覚悟を決めてマーティン通りへと入った
化け物が居る可能性は勿論高い…
町は化け物で溢れているのだから…
その時は神の無慈悲さと、自分の運の悪さを呪おう
せめて化け物をやり過ごせるだけの時間が欲しい…
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