111人が本棚に入れています
本棚に追加
「仲が良いんですね」
不意に運転席から声がしたので、俺はその声にはいと返した。
仲が良いか悪いかって言えば、誰にも負けないくらいに仲が良いと思ってる。
幟鶴は変態だけど親友だしな。
「葵さん、運転お疲れ様です」
「いいや、苦でもなんでもないですよ。君たちは叔父の宝物ですからね」
ん………?
今、俺の聞き間違いじゃなけりゃ"葵"って単語が出てきたような…。
「申し遅れました。私、瀧澤葵と言います」
「やだなぁ、葵ちゃん。言わなくても分かってるよ」
「結鶴くん、でした?それは光栄です」
瀧澤、葵………?
タキザワアオイ?
た き ざ わ あ お い ?
「ぎゃああぁぁあぁぁぁぁあぁっ!!!!」
「…クスッ………どうされました?」
「こんの…こんの猫被りがあぁぁあぁあぁぁぁぁあっ!!!」
「こんな狭いところで叫ばないでくださいよ。耳障りです」
「耳がキィーンってぇ………」
瀧澤葵なんて人名を、こんなに早く聞くことになるとは思わなかった。
それがしかも同乗者だったなんて……。
敬語なんて使って猫被りやがって!!
俺知ってるんだからな!?
瀧澤葵は天性の俺様で、慈愛や慈悲の欠片も持ってないこと!!
大体俺は瀧澤葵が敬語を使えること自体で驚いてんだからな。
それに加え、同乗者なんて知ったら目眩してきた。
「こら、負のオーラを放ちつつ目眩を起こしてるんじゃないですよ。そのあからさまに出してる拒絶のオーラも引っ込めなさい」
「ぅ………はぃ…」
千鶴に逆らったら怖いことは、あの店の人間だけじゃなくて、あの辺一帯の人間は大体知ってる。
だから、俺はおとなしく出ていたらしいオーラを引っ込めた。
最初のコメントを投稿しよう!