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「なんで瀧澤葵が乗ってんのさ?」
そっと隣に座っている千鶴に耳打ちした。
時折、瀧澤葵の方を見て、こちらを見てないから確認しながら。
「知りませんよ。俺たちが仕組んだわけでもありませんからね。そんなに知りたければ、本人に聞けば良いんじゃないですか?目の前にいるわけですしね」
………お前、幟鶴と一緒にくたばれ。
嫌いなことを知ってるくせに、そうやって千鶴はからかってくるから嫌だ。
さっきだって返事を返したのは、瀧澤葵だってことを知らなかったから。
声を集中的に聞きながら常日頃いるわけじゃないから、覚えているわけがないからな。
会話しちまっただけでもこっちにしては、人生最大の汚点だ。
「くそぉー………」
「着きましたよ。ルーム番号は受け付けにいる方に聞いてください」
「この猫被りオヤジ…………」
俺は最後その言葉を車内に残し、車から引き摺りだされた。
───── 千鶴に。
「何すんだよぉ………アホ、クズ、マヌケ、千鶴なんか死ね…」
「よくも本人を前にしてそんなこと言えますね、久遠?」
「千鶴のボケ………」
「…………久遠じゃなかったら、殺してますよ…まったく」
もうあいつの猫被りに付き合ってられない………。
二度と喋りたくない……。
関わりたくない…。
早くもテンションがた落ちになった俺を幟鶴が抱き上げ、受け付けに行きルーム番号を聞いた。
言われた部屋に俺たちは向かった。
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