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あー……やっぱ、のど飴に限る。
俺はのど飴中毒じゃないぞ?
たまに食べる程度だからな。
まあ、千鶴もガリガリ噛むようになったのはカラオケがきっかけ。
千鶴も結鶴に俺みたいに歌わされて、のど飴食い過ぎてクセになったらしいよ。
だから、こいつの別のカバンの中にはのど飴が溢れるほど入ってる。
単なる甘党じゃなくて、のど飴専門の甘党だからな。
チョコ、クリーム、まあ飴以外は全滅だから喫茶店に誘ってもコーヒーしか飲まないんだよな。
そういや、さっきから千鶴なんにも歌ってないけど………
「千鶴は歌わないのか?」
「歌えとは言われてませんからね。自分から歌いたいとは思いません」
「じゃあ歌え」
「何をですか」
「千鶴の十八番」
「はあ………仕方ないですね」
おもむろに番号入力し曲を割り込んだ。
………順番守ろうぜ。
俺が言えたことじゃねぇけどよ。
そういや、千鶴の十八番ってなんなんだろう。
俺知らねぇや。
イントロが流れだす ────。
「蒼く光り逝く幻を、掴もうとあがいた僕──────」
千鶴が歌いだした瞬間、空気が一気に変わった。
張り詰めるような、針で突けば破れてしまいそうな────言い表わしようがないけど、ただ誰も喋ろうとはしなかった。
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