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我慢ならなかった。
例え俺が貶されようが罵倒されようが、大抵のことは言い返すだけで済む。
だけど、友達のことを貶されたり罵倒されるようなら……俺は犠牲を厭わない。
「………姫城、結鶴を見てみろ」
「なんなんだ!!!」
とは言っても、条件反射で身体は結鶴の方に振り向いた。
───── 何笑ってんだよ。
誰のために俺がこんなに瀧澤葵に言ってるのか分かってんのか?
「何笑ってんだよ」
「くお、あれくらい言わないと席譲ること嫌がるでしょ?だから、"首飛ばす"を付け足したんだよ。ごめんね?」
ごめんね?じゃねぇよ。
どれだけ今の俺が赤っ恥かいてるか分かってんのか。
さすがに空気を読んだのか、誰も笑っちゃいねぇ。
───── けどよ、俺のプライドは今の結鶴の一言でめっためただ。
あの時、確かにその言葉を付け足されなかったら絶対に譲らなかった。
だからってそれを利用すんなよ。
なあ、結鶴。
その場にいられなくて、俺はボックスを抜け出したんだ。
別に結鶴に裏切られたわけじゃないのに、涙が流れて止まらなかった。
誰かに見られたくなかったから、ボックスの近くにあった神社の石段に座り込んだ。
ここまで走ったんだから、もう誰も追ってこないと思ったんだ。
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