part02†泡沫

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「頼むから上げてくれよ……」 「勘弁してやってくれるか?」 「………分かったよ…」 分かったしか言えねぇよ……。 初めから、謝られたくてここまで走って逃げてきたわけじゃねぇんだから。 それに結鶴は大切な奴だから。 確かに俺にしてみれば、結鶴は俺を悪い意味で利用した。 咎めたいって気持ちがないわけじゃない。 ──── でも、結鶴はこんなこと二度としねぇって思ってる。 だから……咎めたりしない。 「ありがとう。ほら」 「なっ……………」 瀧澤葵はスーツの上着を脱ぎ、俺に被せた。 ……こんな情けかけるみてぇなこと、してんじゃねぇよ。 そりゃ夜は冷え込むけど…こんなのいらねぇよ。 瀧澤葵に上着を突っ返した。 「いらない。返す。俺なら良い」 「姫城は厳しいな」 そう言って自嘲気味に笑った。 ………俺、なんかしたか? 上着突っ返しただけじゃねぇか。 本当に上着なんていらなかったし、何より恩着せがましいことされたくねぇし。 見返り求められることほど、嫌なことはねぇんだ。 だから突っ返したんだよ。 「厳しいとかじゃねぇよ。俺は千鶴達以外に優しくされたくねぇんだよ。特に瀧澤葵、お前からはな」 「俺の何が気に食わないんだ?」 「とにかく嫌いだ。近寄るな」 「理由になってないな。無理に好きになれとは言わない。ただ、露骨に避けるのはやめてほしい。仕事だけでの付き合いで、今は構わない」 ───── 意味分かんねぇ。
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