part02†泡沫

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「あのなぁ、いい加減諦めろよ。上着突っ返されて、嫌いだって堂々と公言されてまで俺にこだわる理由があるのかよ」 「あるな」 「なんだよ」 聞かなきゃ良かったなんて、もう遅すぎた。 「姫城が好きだ」 「……冗談ならやめろ。今すぐ撤回してくれ。俺にそういう趣味はない。それ以前に俺はお前が嫌いだって言ったろ」 こうでも言わないと平常心を保てそうになかった。 女に好きだ好きだ言われることは、仕事が仕事だから数えきれないくらいある。 それは否定しない。 だけど、男に言われたことは一度もねぇよ? 俺が好きだと言ったって、それに恋愛というものを合わせて言うことはない。 それは、誰もが知ってることだ。 ───── 悩みを増やしてくれるな。 俺はお前に真剣になるような奴じゃない。 何より噂の回りはただでさえ早いんだ。 お前が今言ったことを万が一俺が話したとしてみろ。 瞬く間に広がっていく。 ライバル店もそれを良いことに稼ぎ始めるだろうし。 そんなリスクを背負ってまで、お前に真剣になられたくないし、なりたくもないんだ。 「今はそれで構わない。まずは、仕事上の付き合いから始めてくれないか?」 「断る。俺は千鶴や他の奴らとワイワイ騒いでたいんだ。お前に構う暇なんてねぇんだよ」 ───── もう帰ろう。 そう思い、石段から立ち上がろうとすると身体が一気に右に傾いた。 大体の予想はついてんだ。 ただそれを認めたくはないだけで。 「そこまでして、姫城は俺を全力で拒絶して……好きだと知った上でそういう態度をとられるのは、さすがに傷つくんだがな」 耳元で囁かれ、鳥肌が立った。
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