part02†泡沫

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嫌だ…嫌だ嫌だ…っ……!! やめてくれ! 嫌悪感と気持ちの悪さから、吐き気までしてきた。 これは、ごく一部の人間しか知らないことだが、俺は男に恋愛対象として見られるのが本気でダメだ。 これはトラウマから来るものであって、同性間の恋愛を否定してるわけじゃない。 ────そろそろ限界だ。 「やめろよ!!離せよ!俺に触るな!俺が好きって言うなら二度と近寄るな!次近寄ったら……」 「近寄ったら?」 石段を器用に後退りする。 もうこいつに近寄られるだけでもダメだ。 身体なんか触られたら、次は正気でいられるかすら俺にも分からないんだ。 「千鶴達に守ってもらう……」 「結局は他力本願か。まあ、それも姫城らしい。一つ言っておきたいんだが、姫城が好きになった女から拒絶されたらどうする?」 唐突な質問から、俺は少し動揺した。 俺が好きになった女から拒絶されたらってか。 「俺はすっぱり諦める。拒絶された時点で冷めるからな。だからお前の気持ちは理解できねぇ」 「───理解出来ない、か。それも構わない。あとそこを最後まで下りたら車道だ」 「え……」 間抜けな声を出し、俺は車道に尻餅を付いた。 踏み外したわけじゃなくて、まだ石段が続いていると思って踏み出せばこの状態だ。 ──── サイアクだ。 待ってましたとばかりに、瀧澤葵は俺に近づいてくる。 俺は座り込んだまま後退る。 「車に引かれるぞ?」 「お前に何かされるくらいなら、ひき殺される方がマシだ」 「相当な嫌われようだな」 「とにかく…俺、帰るから」 立ち上がって、走ってきた道を戻ろうと向きを変えた途端─────後ろから抱き締められた。 異物が込み上げてくる。 喉が焼ける…………。 必死で吐き出すのを堪える。 さすがにこの場で吐くわけにもいかねぇから。 肩を持たれ、180度向きが変えられる。 瀧澤葵と向き合うように形になってしまった。 目を合わせたくない。 ────早く離してくれよ…。
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