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嫌だ…嫌だ嫌だ…っ……!!
やめてくれ!
嫌悪感と気持ちの悪さから、吐き気までしてきた。
これは、ごく一部の人間しか知らないことだが、俺は男に恋愛対象として見られるのが本気でダメだ。
これはトラウマから来るものであって、同性間の恋愛を否定してるわけじゃない。
────そろそろ限界だ。
「やめろよ!!離せよ!俺に触るな!俺が好きって言うなら二度と近寄るな!次近寄ったら……」
「近寄ったら?」
石段を器用に後退りする。
もうこいつに近寄られるだけでもダメだ。
身体なんか触られたら、次は正気でいられるかすら俺にも分からないんだ。
「千鶴達に守ってもらう……」
「結局は他力本願か。まあ、それも姫城らしい。一つ言っておきたいんだが、姫城が好きになった女から拒絶されたらどうする?」
唐突な質問から、俺は少し動揺した。
俺が好きになった女から拒絶されたらってか。
「俺はすっぱり諦める。拒絶された時点で冷めるからな。だからお前の気持ちは理解できねぇ」
「───理解出来ない、か。それも構わない。あとそこを最後まで下りたら車道だ」
「え……」
間抜けな声を出し、俺は車道に尻餅を付いた。
踏み外したわけじゃなくて、まだ石段が続いていると思って踏み出せばこの状態だ。
──── サイアクだ。
待ってましたとばかりに、瀧澤葵は俺に近づいてくる。
俺は座り込んだまま後退る。
「車に引かれるぞ?」
「お前に何かされるくらいなら、ひき殺される方がマシだ」
「相当な嫌われようだな」
「とにかく…俺、帰るから」
立ち上がって、走ってきた道を戻ろうと向きを変えた途端─────後ろから抱き締められた。
異物が込み上げてくる。
喉が焼ける…………。
必死で吐き出すのを堪える。
さすがにこの場で吐くわけにもいかねぇから。
肩を持たれ、180度向きが変えられる。
瀧澤葵と向き合うように形になってしまった。
目を合わせたくない。
────早く離してくれよ…。
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