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この部屋にいるのは彼女一人ではない。
部屋にはもう一人、地下室への唯一の出入り口である鋼鉄製のドア付近の壁に姿勢良く立つ老人。
その老人は燕尾服をその身に纏い、全ての髪の色素が抜け落ち白髪となった髪をオールバックにした執事。
その執事は優しそうな微笑みを零しながら、魔法陣の前に立つ少女に話し掛ける。
「姫、大丈夫ですか?」
執事の見た目とは裏腹な力強い威厳すら感じられる声で訊ねられた少女、漆黒の姫君は顔だけを執事のいる方へと向け、ゆっくりと頷くと目を瞑って精神を集中させる。
そして体中に魔力を巡らせ、魔法陣に流し始める。
全ての準備が整った事を地下室に漲(みなぎ)っている魔力から感じ取った少女は、用意していたナイフで右手の人差し指を切り、魔法陣の上へと右手を翳し血を零す。
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