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「おはようございます、みなさん」
テュオの挨拶にエリン町民の面々の表情が緩む。
だが、すぐに不安と焦りの顔に戻ってしまった。
「テュオちゃん……」
「はい、話はトマ君から聞いてます。オーナーは中に?」
「ああ…奥さんはショックで倒れてしまったらしい……大旦那が待ってる。早く行ってやってくれ」
テュオは頷きだけ返すとギルバート家の扉をノックした。
「オーナー?テュオです、入ります」
空気が重い。
温厚な人柄のギルバート夫妻。
その屋敷から、今まで感じた事の無い異質な空気に、扉を開ける手が汗ばむ。
「………失礼します……」
町民の見守る中、テュオは屋敷に入る。
「………カナ」
トマ少年の呟きが聞こえたのか、テュオは振り返ると彼に少し微笑み、ゆっくりと扉を閉めた。
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