―第1話・マスター&MASTER―

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エリンの北側半分を占める大市場。 その南に位置する屋敷の主はしかし、応接間のテーブルにて憔悴しきっていた。 「……オーナー……」 こんなファッツガルの表情は初めて見た。 無理も無い。 温厚な人柄のギルバート夫妻が溺愛していた1人娘の突然の蒸発…。 その心境たるや、どれほどのものであろうか。 「……座ってくれ」 差し出された手の先にあるソファに腰掛ける。 ピンとした空気。 何より今回の出来事。 「……話は聞いているかな?」 「はい。……気付かれたのはいつ頃ですか?」 「今朝だ。家内が血相を変えて私の部屋に来たよ。その時にはもう……カナは消えていたらしい……」 「……昨夜はカナちゃんとご一緒に帰られましたよね?という事は……」 「うむ……夜半から明け方にかけて……カナは消えた」 オーナーの手が震えているのが分かる。 「……オーナー?まさか今回、カナちゃんが消えた場所には……」 テュオは予測めいた言葉を綴る。 何故なら 行方不明事件自体が、昨今のアルタ大陸のちょっとしたミステリーだった為だ。
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