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エリンの北側半分を占める大市場。
その南に位置する屋敷の主はしかし、応接間のテーブルにて憔悴しきっていた。
「……オーナー……」
こんなファッツガルの表情は初めて見た。
無理も無い。
温厚な人柄のギルバート夫妻が溺愛していた1人娘の突然の蒸発…。
その心境たるや、どれほどのものであろうか。
「……座ってくれ」
差し出された手の先にあるソファに腰掛ける。
ピンとした空気。
何より今回の出来事。
「……話は聞いているかな?」
「はい。……気付かれたのはいつ頃ですか?」
「今朝だ。家内が血相を変えて私の部屋に来たよ。その時にはもう……カナは消えていたらしい……」
「……昨夜はカナちゃんとご一緒に帰られましたよね?という事は……」
「うむ……夜半から明け方にかけて……カナは消えた」
オーナーの手が震えているのが分かる。
「……オーナー?まさか今回、カナちゃんが消えた場所には……」
テュオは予測めいた言葉を綴る。
何故なら
行方不明事件自体が、昨今のアルタ大陸のちょっとしたミステリーだった為だ。
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