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オーナーは懐から取り出したモノをテーブルに置いた。
「………やっぱり」
灰色で艶の無い正三角錐の物体。
掌よりも少し小さいくらいのそれは、石とも鉄とも言えない奇妙な肌触り。
「……よもや、我が娘がと……目を疑ったよ……」
静かながら怒りに満ちた声はかすかに震えを伴っている。
「…………………」
テュオは何も言えない。
目の前の男は今、自分の不甲斐なさを責め立てている。
その行為は、どれだけ愛娘を大切にしていたか、それを現すモノに他ならないからだ。
「………アルタでの失踪、これで三人目だ」
オーナーの顔が、市場を取り仕切るそれに戻る。
そう、
これは既に、エリンだけの問題では無くなっていたのだから。
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