―第1話・マスター&MASTER―

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この事件はアルタ大陸に広まった。 テュオ達の耳に入ったのはカタリア事件の少し後。 誘拐とも蒸発とも取れない、不可解な神隠し――。 そして今回、よく知る人物が姿を消した事で、放置できない事象へと変わる。 「今回、テュオ、君を呼んだのは他でもない」 口を開いたオーナーの言葉に、いつもの優しさは無かった。 テュオも分かっている。 今回の呼び出しは、いつもの『私』が必要なのではない。 「わかってます、オーナー。流石にもう、放っておけませんものね」 テュオは席を立つ。 オーナーは彼女の目の色が違う事に感謝と後悔を覚える。 「……すまない。マスターならぬ、MASTERに頼る事になるが……もはや他に方法もない……」 「お気になさらずに、オーナー。確かにあまり良い思い出はありませんが……こんな役立て方もあるんです、今は良かったと思ってます」 踵を返して、テュオは背中越しにそう語った。 「今日の夕方にも開始します。しばらく帰れなくなると思いますが……お店、よろしくお願いしますね」 「……わかっている」 では、とテュオは応接間を後にした。 「………テュオ、すまない………娘を……カナを頼む………!!」
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