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『不公平だ』
彼の口癖だった。
全てが見たかった、ただそれだけ。
仲間達は皆、口を揃えて同じ言葉を吐き出すばかり。
『不可能だ』
『ナンセンスだね』
『非論理的だよ』
不思議と彼は穏やかだった。
彼は自己を客観的に見ることができた。
確かに
自分の言っている事は変わってる。
だが、それがなんだと言うのか。
それを完全否定できる奴はいない。
彼はそれを知っていたのだ。
『何故、この世界だけなんだ……?』
彼は考える。
世界が分け隔てられた訳を。
ふと
穏やかだった彼の心に影が差す。
恐怖か、絶望か。
怒りか。
彼はきっと
そこから狂い始めたのだろう……。
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