6人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
……それから数分後。
簡単に身だしなみを整えたテュオは、トマ少年と共に店から町に続く丘の下り坂を駆け降りていた。
「全く、心臓が止まるかとおもったぜ……」
「あはは…大変失礼しました。私としたことが醜態を晒してしまいましたね」
頬をコリコリと掻きつつ女性は少年に謝罪する。
「……まぁ、良いけど。それより急ごうぜ?オーナー、かなり待ってるはずだからさぁ」
「でしたね。様子からして只事では無さそうですけど……何か聞いてますか?トマ君」
「……………………」
テュオの問いに少年は答えず、市場に続く路地を走り抜ける。
ふと周りを見れば、心なしか町を行く人々も市場の方向へ向かっているような……。
「……………………」
中央広場を北へ。
市場まではもう一本道だ。
2人はそこで駆け足をやめて歩き出す。
「…………カナが……」
「え?」
トマ少年の口から出た名前。
テュオも知っている名前を言った少年の顔は、不安と焦りの色がある。
「……カナが……消えちまった」
最初のコメントを投稿しよう!