―第1話・マスター&MASTER―

5/16
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
……それから数分後。 簡単に身だしなみを整えたテュオは、トマ少年と共に店から町に続く丘の下り坂を駆け降りていた。 「全く、心臓が止まるかとおもったぜ……」 「あはは…大変失礼しました。私としたことが醜態を晒してしまいましたね」 頬をコリコリと掻きつつ女性は少年に謝罪する。 「……まぁ、良いけど。それより急ごうぜ?オーナー、かなり待ってるはずだからさぁ」 「でしたね。様子からして只事では無さそうですけど……何か聞いてますか?トマ君」 「……………………」 テュオの問いに少年は答えず、市場に続く路地を走り抜ける。 ふと周りを見れば、心なしか町を行く人々も市場の方向へ向かっているような……。 「……………………」 中央広場を北へ。 市場まではもう一本道だ。 2人はそこで駆け足をやめて歩き出す。 「…………カナが……」 「え?」 トマ少年の口から出た名前。 テュオも知っている名前を言った少年の顔は、不安と焦りの色がある。 「……カナが……消えちまった」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!