東方夢魔廻

家出から幻想へ

「…家出でもするか？」

どちらにしても独りだから変わらないしな

その時･･･

「なら、その家出手伝いましょうか？」

声が聞こえた…

「誰だ？どこにいる？」

「貴方の後ろよ」

振り返る。
確かに居る。白と紫の和風の服を着た金髪の美女がいる。

「…で、結局誰だ？」

「あまり驚かないのかしら？」

無防備に鍵開けっ放しな事を思い出したからな

俺は警戒心を隠さないままに云う。

「…質問には答えないのか？」

「先に質問したのは私よ？」

「ふむ…貴女が誰か分からなければ答えようが無い。」

「それもそうね。
私は八雲紫よ。」

いともあっさりと答える。

「聞いたこと無いな。
で、手伝いってのは？」

謎の美女、八雲紫…ね
努めて顔には出さないが、ワクワクしてくるな

「貴方を幻想郷に連れていくわ。片道だけよ？帰っては来れないわ。」

「聞いたことも無いな…。
俺が行っても大丈夫なのか？」

「幻想郷の方は問題無いわね。貴方は…まあ大丈夫よ♪」

とてもいい笑顔で答える。
普通なら信用するべき相手ではない。が･･･

「…連れていってくれ。」

「あら？案外簡単に決めたわね。」

「貴女みたいな人間が居るなら楽しそうだからな。」

俺は警戒を少しだけ解いて笑顔で答える。

「いきなり雰囲気変えたわね。
ああそれと、ちなみに私は人間ではないわよ？」

「は…？」

「妖怪よ」

今こいつは…紫はなんと云った!?妖怪だと!?

「はぁっ!?そんなもん居る訳が無い！」

「じゃあ証拠を見せましょうか。」

空間が裂けた!?
なんだこれ!?

思わず俺は呆けてしまう

「貴方は思ったよりクールな人間ではなかったのね…」

「…まあな。初対面でテンション高いとだるいだろ？」

そもそもこんな状況で冷静で居られる人間が居るとは思えないが…

「それで、信じる気になったかしら？」

「信じがたいが信じるしかなさそうだな…。
で、この穴は？」

「これが幻想郷に繋がる道よ♪」

これに入るのは…ちょっとなぁ…
なにせ、ゴゴゴという異音が聞こえそうなほど禍々しい…

「…かなり抵抗があるんだがどうだろう？」

「じゃあ後押ししてあげるわ♪」

穴が足元に開い…

「ッ……アアァァァ……」

「ようこそ幻想郷へ♪」