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狙いは、金を持て余した人妻や日頃からストレスを溜め込んでいるOL、自分と同じ職種である夜の女等だ。
しかし、この区域は路上での客引きが禁止されている為、目立った行動は出来ない。
亮輔は電信柱から背を離し、条件に当てはまる女性を求めて歩き出した。
挙動不審にならないように、さり気なく視線を走らせる。
1人の女性に焦点を定めた。暇ですと言わんばかりにぶらぶらと歩いている、中年の女だ。
年不相応のミニスカートに、高級ブランドのオンパレード。間違い無く、金を持っている。
これを逃すと、今後いつ条件を満たす女性に会えるか分からない。瞬間的にそう感じた亮輔は、反対側から歩いてくるその女性へ進路を向けた。
「すいません、少しお時間頂いても宜しいですか?」
すれ違いざまに向きを変え、並行して歩きながら話し掛ける。女性の年齢的に軽い感じで話せば受け流されるだろうと考え、紳士を装った。
立ち止まり、亮輔の顔を見上げる女性。時間に余裕が無いのであれば、話し掛けられても立ち止まらないだろう。
これは絶対に釣れる。女性の返答を待たずして、亮輔はそう確信していた。
案の定、女性は艶やかな唇を半月のような形にし、亮輔の瞳を凝視した。まるで、品定めをするかのように。
「こんな色男が客引きだなんて、随分とレベルが高いお店ね」
亮輔よりも更に長い茶髪が風に揺れ、妖艶な女性を彩る。
話が早くて助かると思いながら、亮輔は堪えきれずに笑みを零して頷いた。
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