プロローグ

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 駅前へ行く為のスクランブル交差点前には、遠目にも分かる程の群集が居る。  それを避けようと、梅津は手前に設けられた歩道橋へ。  この蒸し暑い日に歩道橋を渡る物好きな人間は居ない。  案の定、階段を上りきった通路には人の姿が無かった。  汗みどろで、気持ちが悪い。脱水症状なのだろうか、陽炎が立っている様に視界が揺れる。  意識が朦朧とし始め、梅津は堪らず片膝を付いた。  目を瞬かせ、頭を振る。皺の伸縮と頭部の振動で、額の汗が下顎から地面へ零れ落ちた。  そう言えば、朝に麦茶を飲んでから水分を口にしていない。  それに気付くも、視点の定まらない今の状態では自販機へ走る事すら出来なかった。  今夏も、熱射病で死者が出ている。このまま気絶してしまえば、自分もその仲間入りをするに違いない。  暑さとは無関係の生暖かい汗が、体の内側から滲み出た。 「み、水、飲まないと……」  必死に立ち上がろうとするが、筋肉はその指令に反応せず。  死とはこれほど単純に訪れるものなのか。梅津は唇を噛んでそう思った。 「これ、飲みなよ」  甲高い声と同時に小さな日陰が出来る。地面を遮った物は、ペットボトルに入った液体。  体が欲していたらしく、差し出してくれた相手の顔も見ず、それを口に運んだ。  
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