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口に含んだ瞬間、水分を喜ぶ筈の体が拒絶反応を示した。
吐き出した時に、その液体が赤黒かったと気付く。
口内に残る、違和感だらけの味と匂い。
咳き込みながら、梅津は身震いする体を宥めようと努めた。
「どうしたの、飲みなよ」
頭上から聞こえる声は驚く程優しい。が、その申し出は素直に受け入れられない。
「何を、飲ませたんですか」
首を上げながら尋ねた梅津は、恐怖におののいた。
目の前に立っている人物が、見知った顔をしていたからだ。
彼女は自然体の笑顔で、
「分かっているくせに」
確かに、訊くまでもない。全てを吐き出しても尚残る、この鉄臭い味と匂いは何なのか。
決まっている、血だ。
彼女が何故自分に血を飲ませようとしたのか、梅津には分からなかった。
土曜の昼時に血が入ったペットボトルを持ち歩く女。それが知り合いとなれば、混乱が倍増するのもしょうがない。
「どうしてこんな事を……?」
「さあ、どうしてかしら」
質問に答えない彼女に苛立ちを覚え、梅津はペットボトルを後ろへ投げ捨てた。
そのまま立ち上がって睨み付けるも、彼女は動じない。
「強いて理由を言うのなら」
梅津の頬を撫でた彼女は、
「仲間が欲しかったから」
微笑みが、気味悪かった。
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