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看護師国家試験を受けたのは半年以上も前になる。
年度内に専門学校を卒業しなければ資格を剥奪される決まりで、真子は滑り込みだった。
ある事件に巻き込まれた影響で病院への配属が遅れていた状況下、真子は孤軍奮闘した。
幼い頃に病気で亡くなった父の為にも、回り道をしていられなかったのだ。
真面目な性格が仇となって、看護学校での友人は皆無。その分、勉学に没頭出来た。
私はこれで良い。そう言い聞かせるのに抵抗は無かった。
長所を自己分析した結果は、揺れ動かない心。夢に向かって突き進める人間だけがその願いを成就させるべきだと、真子は考えていた。
看護学校の講師からは、病院での人間関係が心配だと苦言を呈されていた。
それに異論を唱えていた自分を、歩きながら思い出す。
人が生きて行く為に必要なのは他人ではない、志だ。
他愛のない話で親睦を深める暇があるのなら、採血の精度を上げるべきだと反論した。
その言葉に目を丸くした講師は、真子なら夢を叶えられると背中を押してくれた。
だが、その裏では人としての評価を大きく下げていた事を、真子は未だに知らない。
閑散とした雰囲気の坂道を上っていると、それを打ち消す音が徐々に近付いてくる。
足を止めて振り返ると、青い軽自動車が蛇行しながら猛スピードで坂道を駆け上がってくるのが見えた。
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