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勿論、口説かれたのは私。
私は、自分から告白するような積極的ではないから。
きっかけは、なんだったかは忘れたが、お互い最初から好感は持っていたんだと思う。
ある時、私はマスターに訊いてみた。
「ねぇ、マスターがママに惚れてて、居てもらってんの?」
「ハァ~
俺の態度見てて、そう思うかよ~。」
呆れ顔だ。
「そう思わないし、不思議だと思って聞いてんの~。
それとも家に帰ったら、違うのかなぁって思ってさ~。」
「バカ言ってんじゃないよ。
大体、会話なんてないよ~。
俺が家で、ベラベラ話すと思ってんの?
ゴルフで朝早いしさ~。」
確かにマスターは、殆どがゴルフ三昧の日々。
お客さんとの接待ゴルフや長男と行ったり…
ママとも行ったりするけど、ママはママで別々に接待ゴルフをする事が多かった。
大体マスターは、そんなに口数も多いタイプではないし。
「俺がそんなに、ママの事惚れてたら、今こうして一緒に居ないよ~。」
まぁ、このセリフは、不倫男の常套手段だからねぇ。
マスターと付き合い出してからは、ママの
「うちのパパ、私に惚れててさ~。
仕方ないから居てやってんのよ~。
私以外見えてないんだから…
ホーホッホッホ♪」
も、
「そうですよねぇ(笑)」
と言いながら、嘲笑っていたものだ。
勿論、自分中心に地球が廻り、自分大好きなママには、私が浮気相手だなんて気付くはずもない。
「明日、お前腹痛な。」
それはマスターから、休めの合図だ。
「小林君、明日私腹痛で休みね(笑)」
小林君だけには打ち明けたので、二人の関係を知っている。
「ぇええ~
ヤバいですよ。
ママに言いづらいなぁ~。」
「じゃ、マスターが腹痛って言ったから、休むって言っておいて(笑)」
「そんな事、ママに言える訳ないじゃないですか~。
でも凪砂さん休むってのは、店もかなり痛いからママもいい顔しないし。
参ったなぁ~。
もう、マスターのせいだ!!」
「そう♪そう♪
マスターが悪い(笑)」
仕事に対する責任感を除けば、困る事はなかった。
休む分の日当は、マスターが保証してくれたから。
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