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お互いの立場もあるので、私達のデートは県外が多かった。
二人で居る所なんて、万が一お客さんに見られたら、二人してアウトだから。
特にマスターの外車は目立つし。
午後から出掛けて行って、小田原や箱根辺りに一泊して帰る事が多かった。
一方、この頃さーちゃんと私の最終章でもあった。
好きでも一緒になれない相手とズルズル付き合っていても…
真剣に考えるようになっていた。
けど、未練だらけ。
簡単に、断ち切る事なんて出来ない。
他の人と付き合えば、忘れられるかも知れない。
けど、やはりマスターと居ても、心底楽しめる訳ではない。
さーちゃんには、マスターとの関係を言ってある。
隠れてコソコソなんて、出来る性分でもないし。
マスターは、最初の面接の時から、さーちゃんの存在は知っている。
けど、動じる事もなかった。
大人の付き合いと割り切っていたのかも知れない。
さーちゃんには勿論、先制攻撃だ。
「反対される筋合いはないから。
自分だって、二人の女と付き合ってるんだからさ。
少しは、私の気持ち分かればいいんだよ。」
これはある意味、私の賭だった。
自分の女が、他の男とも付き合ってる。
こんな心苦しい事は、ないはずだ。
もしかしたら
もしかしたら、私を選んでくれるかも知れない。
ママとは女通しのプライドを賭け、さーちゃんとはやっぱりさーちゃんの全てを独占したくて…
浅はかな、それでも精一杯の私の抵抗だった。
命懸けで好きになった男だから。
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