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「怪我なくてよかった。とりあえず」
子供たちの興味津々という視線を全身に受けながら「ここを離れるか」
案の定、ブーイングの嵐。
困ったように子供たちに話しかけるマリィの腕を強引に掴む。
「あ、あの」戸惑う彼女。
まったく、お人よしというか優しすぎるというか。
マリィの腕を掴んだまま、俺は子供たちに宣言。
「デートの邪魔をするな。いいな」
俺の真剣(…切実?)な気持ちが伝わったようで、子供たちは黙り込むと、静かに頷いてくれた。ちょっと同情的な視線もあったが、無視することにする。
友好ムードで手を振りながら、俺とマリィは公園を出ることとなった。
「今日の仕事は終わったのか?」
「はい」
にっこり笑顔を向けて、彼女は話を続ける。
「啓さんも今日は早く学校が終わるって言っていたのを思い出して…会いたくて」と頬を染めた。
その表情とそのセリフ。反則ものでしょう。
俺の心臓はかろうじて耐え切った。
「外は寒いだろ?家で待っててくれればよかったのに」
「おばさまもおっしゃってくださったんですけど、その…一緒に帰り道を歩きたいなと」そして、ちろっといたずらっ子のように舌を出した。
…これ、計算してないんだよな。全くの天然発言と行動なんだろうな。
一瞬黙り込んでマリィを見つめてしまったせいか、彼女が慌てたように。
「ご迷惑でしたか?ごめんなさい。私、自分のことしか考えなくて」
「あー、違う違う。逆、逆」
慌てて頭と手を振り、否定のジェスチャー。
「嬉しくて、どう反応していいかわからなかっただけだから」と言ってしまってから、自分も天然な発言をしていることに気付く。照れる暇もないくらい、マリィの表情が輝いた。
「嬉しい、って思っていただけるんですか?本当に?」
そんな表情されたら、もう何も言えない。俺は黙って、彼女の手を握る。ちょっぴりひんやりしているその手は、待っていた時間を想像させてくれて、握る手にほんの少し力がこもった。
「じゃ、帰るか」
「はい」
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